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カヌレ2008.04.06 Sunday



 付けが貯まっていたので支払いに行った。自分にとって数少ない付けの利く店のひとつである。BARだったら格好が良いかもしれないが、花屋(植物屋)である。恵比寿と広尾のちょうど真ん中、住宅街に佇む「Garage」は女店主の丁寧な仕事が気に入っていて、何かとお世話になっている。春だからだろう、いろいろな友人が立て続けにお店をオープンし、そのお祝い花をお願いていて、その付けが貯まっていたという訳である。
 支払を済ます前にお互いの近況報告などをし、そして世間話へと続く。ちょうど別の友人に会う前に訪れたものだから、この辺りに何か手土産に良いモノはないかと聞いてみると、お勧めの洋菓子屋があると教えてもらった。生憎、予定とは逆方向だったけれどもご近所だし、またの機会に行ってみると伝え、貯まった付けを支払い、植物に囲まれた空間を後にするのはちょっと寂しく、後ろ髪を引かれたが、その場を後にした。

 その翌々日だったか、どうしても気になってしまい、お店のオープン前に勧められた洋菓子屋に行ってみることにした。教えられた通りに行ってみると、入ったことはないが、知っているお店だった。何せ看板に並ぶアルファベットが読めず、結局お店のことも知り得なかったのだろうと想像できた。中に入ると、左側にショーケースがあり、その中にはケーキ類が、そして中央のテーブルと右側の棚にはこんがり焼けたパンが並んでいた。探しまわったが目当てのモノが見つからなかったのでお店の人に「カヌレはありませんか?」と声をかけると、お店の人が指差し、ちょうど自分の前にピラミッドのように高く積み上げられていた。苦笑いをし、いくつか包んでもらい、SOURCEへ向かった。
 店を開け、早速コーヒーを入れ、スタッフと一緒にいただいた。外はカリッと、中はシットリ。自分の表現力の無さを感じるような在り来たりな表現になるが、絶妙な甘みといい、美味い。砂糖の入っていないミルクティーにあいそうである。それ以来、どこかに出かけるときは少し早めに出て、カヌレを買って手土産にしている。その時はもちろん自分の分も別の袋に入れてもらうのは必至である。最近ではどちらが本当の目的なのか忘れそうになるほどだ。

カヌレ ¥210-
at BURDIGALA 広尾

インドの歩き方 - HOTEL2008.03.28 Friday



 インドに行くと決める前からジャイプールでの滞在はNarain Niwas Palaceと決めていた。以前からLenaが「絶対ここがお勧め!」と押していたホテルだったし、特に常宿がある訳でもなかったので、そこに泊まることを旅の楽しみのひとつとしていた。予定ではLenaと一緒に行くはずだったジャイプール。予定では・・・彼女に急用ができてしまい、一緒に行くことができなかったジャイプールになってしまったのだ。。。一緒に行けないと分かったのが、僕がインドを出る5日ほど前。ジャイプールのことはすべてLenaに任せっきりだったので、慌ててインターネットを使って予約を試みるも、どうもうまくいかない。これはぶっつけ本番で行くしかない。バスでジャイプールに到着後、その足でタクシーを拾い、ホテルに向かう。すれ違う車やリキシャの距離がほんの数センチ、そんな町の喧騒を抜けると、街の中心部に広大な公園があり、その公園の端に目指すNarain Niwas Palaceがある。大きな門を潜り、ポーターにホテルのデスクに案内してもらう。その道中、目の前の見える建物はホテルと言うよりは古い宮殿のような雰囲気だ。ワクワクする。デスクに着いて、部屋は空いているだろうかと尋ねると、離れの1部屋だけが空いているということだった。門を潜ってここまで来る間に何棟が小さなコテージのようなものがあった。それのことのようだ。宮殿内ではないのは残念とも思ったが、キャンプに来て泊まるバンガローようで楽しそうではないか。2つ返事でその部屋を使わせてもらうことにした。実際に古いお城なのか?マハラジャの家だったものなのか?詳しくは分からないけれども、離れのその部屋の中にもそこかしこにクラッシックな様式が見られる。決して高級ホテルのようなクリーンな印象はないものの、自分にとってはインドらしくて好みである。予定が詰まっていたので荷物を置き、その場を後にするが、今夜は早めに戻ってホテルを満喫したい、そうと思っていた。

 夜、食事を済ませホテルに戻ると、どうも調子が悪い。昨日食べたインド料理だろうか?さっき飲んだチャイか?原因は分からないけれどもお腹の調子が良くない。ホテルのプールへなんてのは、はなから柄にもないが、バーでビールくらいはと思っていたのに今夜は早く寝た方が良さそうである。そのままベットに潜り込む。 翌朝起きるとちょっとは良くなっていた。空腹感もあるし、朝食のためにレストランへ向かう。バイキング形式だったが、ここは控えた方が良いだろう、バナナとカップケーキを少々程度にする。ターバンのようなものを頭に巻き付けたボーイがコーヒーを運んでくれる。外からは鳥の囀りが聞こえ、窓から見える中庭には綺麗な花が咲き乱れ、その中を歩くクジャクの姿が見える。簡単に朝食を済せ、散歩するも、まだ本調子ではない。結局チェックアウトの12時ギリギリまで部屋で安静にしていた。

 折角楽しみにしていたホテルだったが満喫できずに残念。でもこんな時は、また来る理由、リベンジする理由ができたと思うようにしたい。旅はちょっと満足できないことがあることの方がいいような気がする。また、来たいと思うから。

Narain Niwas Palace
Kanota Bagh, Narain Singh Circle Jaipur INDIA
www.hotelnarainniwas.com

P.S.
Narain Niwas Place内にはジュエリーデザイナー、マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック(Marie-Helene de Taillac)がオーナーのセレクトショップ・HOT PINKがあります。ジュエリーはないものの、Khadiを使ったシャツやスカート、パシュミナ・ショール、インテリア小物など、素敵な品揃えです。

インドの歩き方 - cafe2008.03.21 Friday



 花粉吹き荒れる東京に別れを告げ、常夏の(?)インドへ行っておりました。もちろんインドは花粉の季節ではなかったが、たとえその季節に来ていようが、花粉症すら存在するのか分からないほど、1歩外へ踏み出せば粉塵、排気ガス、さらには激しいクラクションに、インドミュージックにと、インドの持つエネルギーにすべてを忘れさせられそうだった。それを感じつつ、楽しみつつ、けれどもそれにどっぷり浸かってしまうにはまだまだ未熟な自分。時折リセットが必要だった。そんなときに立ち寄っていた「Café Turtle」。旅の初めの数日を過ごしたデリーの宿から住宅地を抜け徒歩1分の距離にあるマーケットの一角にあり、1-2階が本屋さん、そして3階がCafé Turtleである。そのマーケット自体が外国人向けのマーケットになっており、マクドナルドはないものの、ファッション、インテリア、レストランなどインドらしからぬ自分にとってはほっとする店並び。お昼時に合わせてCafé Turtleに出向き、インドではなかなか味わえないサンドイッチにカプチーノをオーダー。待っている間を利用してPCを開き、旅のまとめをしたり、これから行く場所への作戦会議をしてみたり、これまたインドではほとんど耳にすることのないジャズの調べに耳を傾けたり、自分をフラットに戻してくれる大切な時間だった。
 アメリカの旅ではひたすら動き回る毎日を過ごすけれども、インドでは予定を控えめにし、情報を集めてピンポイントで動くことが吉と出ることが多いような気がする。

Cafe Turtle
※1-2階の本屋さんもなかなか良い品揃えだし、ちょっとした雑貨コーナーに置かれたものが気の利いていて、お土産に良さそうなものが並んでいました。

PIERRE HARDY2008.03.11 Tuesday



 いつもクラークスのデザートブーツを履きこなしていた友人がいる。まだクラークスがイギリス製の頃だったと思うので、10年近く前のことになるだろうか?その友人がある時からスエードの質感がそっくりだけど、以前のものよりも少し細みのデザートブーツを履いているのに気がついた。そのほんのちょっとした違いが逆に気になっていたが、いつも趣味の話ばかりに花を咲かせていたためか、質問するタイミングがないまま、長らく気になっている状態で時間だけが過ぎていた。
 昨年のこと、別の方から靴をいただいた。箱を開けると、グレーのスエードに黒いゴムのソール、スラリとした面長のボディ、それがまさしくずっと気になっていたデザートブーツだった。ピエール・アルディのものだ。早速勇んで履いてみる。スニーカーやアウトドアっぽい靴ばかりを好んで履いていた自分にとってこの手の細身靴は初体験、見慣れていないせいか自分の足でないようで、どうもしっくりこない。とても失礼だと思うが、嬉しい反面、ちょっと戸惑った。でもせっかく頂いたものだし、色も気に入っていたので履きはじめてみることに。すると、2,3回も履くうちに鏡に映った自分の足元が様になってきているような気がしてくる。自分の持っている中でも細みのパンツに合わせて履くようになり、すぐにお気に入りの1足になった。ピエール・アルディのデザートブーツは定番のシリーズで、毎年マイナーチェンジを繰り返り出されているようで、今年は黒の表皮に白のソールのタイプがリリースされた。ちょうどもう1足欲しいと思っていたので、早速手に入れた。かたちは同じだけど、艶があって、またスエードのタイプとは一味違って良い。
 その数日後、その友人と会ったら、彼も同じものを履いていた。やっぱり趣味が似ているのだろうか。でも彼と会う時には被らないように気をつける必要がありそうだ。時同じくして開催されていた2008年秋冬のパリコレ。Style.comでその様子を覗いて見ると、バレンシアガのショーのフィナーレ、拍手喝采の中で現れたデザイナーのニコラ・ゲスキエール、その足元は自分たちと同じ黒のブーツだ。彼とバッタリ会う機会があるのならば、その時は被りたいものだ。まぁ、偶然なんてないとは思うが。

P.S. GAPからピエール・アルディのデザインしたサンダルが出るようです。日本は3/21から発売って話。でもレディースしかないようで、個人的には残念。。。

SOURCE in GINZA2008.02.26 Tuesday



 東京では数日前に春一番が吹き荒れた。おかげで可愛がっていた植木のひとつが吹き飛ばされ、結果、テラコッタの器が木端微塵に。あぁ、残念。。。 けれども春の訪れには素直に喜びたい。僕の花粉症も春を察知し始めている。

 そんなこの頃、2/27(水)から3/4(火)までの1週間。松屋・銀座の1Fで「ワールドジュエリーフォーラム」なるイベントが開催され、その一角に小さな「SOURCE」が出張します。お近くにお越しの際には是非寄ってみてください。
 イベントも楽しみだけれども、銀座のランチ、今から何を食べようが迷っている。

P.S. 期間中も恵比寿のお店はいつも通り開いています。

Grimaldi's Pizza2008.02.23 Saturday



 ニューヨーク到着後、その足でブルックリンへ移動する。買い付け前に、まずは腹ごしらえ。ちょうど同じ飛行機で買い付けに来ていたLESSのHクンも一緒に行動していて、彼の持っているガイドブックに近くに美味しいピザ屋があるという。
 Grimaldi's Pizzaはブルックリンブリッジのたもと、近年ブルックリンでも盛り上がっているエリア「DAMBO(ダンボ)」にある。お店に入るとランチにしては遅い時間にも関わらず半分以上の席が埋まり、赤と白のチェックのテーブルクロスがいかにもアメリカらしいテーブルに大きなピザがドカンと置かれ、家族でワイワイ、ワインと一緒に楽しむ老夫婦、コーラ片手にひとりでガッツク大男、老若男女に愛されているアットホームな雰囲気が伝わってくる。席に案内され、Hくんとメニューを覗きこむ。メニューは至ってシンプル、ピザが2種に、サイズが2種。これは新参者の自分たちには嬉しい。マルゲリータのラージサイズを頼んで二人でシェアすることに。注文を終えて、お店を見回すとお店の奥に石窯があり、その前でがっちりした男が器用に生地を伸ばし、たっぷりのトマトソースとモッツァレラチーズを素早く乗せ、それを窯へと運ぶ。ちょっとしたステージだ。火力が強いのだろうか、僕らの注文もほんの数分で運ばれてくる。ピザは熱いうちが命。早速1ピースが両手ほどのピザを頬張る。モッチリ、ジューシー、そしてクリーミー。中目黒にあったサヴォイの味に似ているようが気がする。これは美味い。すかさず、2枚目へ。続けて3枚目。しかし3枚目も後半になると満腹感が。美味いには美味いが、ちょっと味に飽きてきたのかと。周りのピザを見ると、みんな想い想いのトッピングを選び、ハーフ&ハーフで注文している常連客もいる。なるほど、ちょっと注文の仕方が違ったか?確かにピザのメニューの隣にダーとトッピングが載っている。今度来た時にはソーセージ、マッシュルーム、ドライトマト、ハーフ&ハーフで。ちょっと上級者を気取ってみたい。

 ガイドブックによると、ニューヨークのグルメガイドで不動のNo.1ピザだとある。そしてかのフランク・シナトラも愛したピザらしい。シナトラトッピングなんてメニューがあったら迷わずそれを頼むのだが。

Grimaldi's Pizza
19 Old Fulton St. Brooklyn, NY

Airport2008.02.08 Friday



 8:45 Tucson International Airport発。ってことは何時に空港についていなくてはいけないのか?ホテルから空港まではどれくらいかかり、またどう行ったらいいのか?チェックイン、その後の手荷物検査にはどれくらいの列ができているのだろうか?何年前にニューヨークからのフライトで余裕を持って出かけたつもりが、乗り遅れてしまった経験がトラウマになっているのか、フライト前のスケジュール作りが毎回悩みの種なのである。
 出発の前日、ホテルのカウンターで自分のフライトを伝え、どうしたら良いか聞いてみる。ツーソンは名前こそインターナショナルと付いている空港だが、決して大きな空港ではない。他のインターナショナルな空港では、3時間前に空港に行って、長ーい列に並び、それでも1杯のコーヒーを楽しむ時間がないことも少なくない。まあ、それ程ではないだろうと想像していたが、カウンターのメキシカン風の女性は7:30にホテルの車で空港まで送ってあげると言う。それはありがたい。でも大丈夫だろうか?空港からそれ程遠くないホテルだったので、空港までは15分もあれば行けるだろう。でもチャックインの時間は1時間しかない。心配性な自分はさらに心配が膨らむ。翌朝、時間通りにカウンターに向かい、ホテルのバンで空港まで送ってもらう。ドライバーが「どこから来たのか?」、「ツーソンはどうだったか?」などと話しかけてくれるのだが、自分には上の空、ちゃんと飛行機に乗れるのが気がかりなのである。10分程で空港に到着、ドライバーにお礼をして、早速チェックインカウンターに行くと、2,3人が並んでいるだけである。やっとここに来て安心する。自分にとってはこれからの長いフライト以上に、そんなことが心配なのである。もう少し旅慣れしたいものである。

 10日間ほどの買い付けから戻り、週末から新しいモノがお店に並べられそうです。またこちらでも徐々にご紹介していきます。

BAR2008.02.06 Wednesday



 早朝、ニューヨークからデンバー(コロラド)へ空路にて移動。天候が悪かったせいもあり、到着が遅れた。このままでは次の乗り継ぎに間に合わないと思って、半ば諦めかけつつカウンターで出発掲示板を確認すると、次のツーソン行きの出発も遅れており、不幸中の幸いなのか、雪の中1時間半遅れで無事デンバーを出発。結局ツーソン(アリゾナ)に着いたのは予定より2時間遅れ、もう夕方だった。シャトルバスでホテルまで送ってもらい、チェックインの頃には辺りは暗くなりかけていた。これからどこかに出かける気にはならないので、今晩は大人しくホテルで過ごそうと決めた。1日中、飛行機で座っていただけだが、腹は減っていた。食事に出かけようと思うが、シャトルで送ってもらう途中、近くにはハイウェイを挟んでファミリーレストランとファーストフードがあるだけだった。選択の余地はなさそうだ。今夜はそこでさっと済ませようと思いホテルを出ると、ホテルの別棟がような場所が薄暗いバーのようになっているようだった。入口に回ると「Happy Hour」の看板が目立つように掲げられていた。いかにもアメリカンな井出達のバーにちょっと腰が引けたが、勇気を出して(?)扉を押した。薄暗い店内には4,5人の土木作業員風の男達が談笑してた。そこに自分を見つけたカントリーソングでも歌いだしそうなウェイトレスさんが素敵な笑顔で声をかけてくれ、席に案内してくれた。席に着く前にビールをお願いし、その後メニューの中からポークステーキを注文した。辺りを見まわすと、暗い店内の明かりのほとんどはビールメーカーのネオンサイン、広い店内には2台のビリヤード台が、大型のテレビにはNBAのゲームが映し出され、角に置かれたジュークボックスからはトム・ぺティが流れ、カウンターに陣取っている男たちの話題は昨日行われていたスーパーボール(アメリカンフットボール)のようだった。程無くして注文したボリューム満点のポークステーキとオニオンリングが運ばれてきた。これを毎日食べていたら、カウンターにいる筋骨隆々とした男たちのようになれるのだろうか。分厚い肉をビールで流し込みように食べながら、なんだか映画の世界に飛び込んだ、そんな錯覚を覚えるほどアメリカンな雰囲気を感じられた。さあ、これを食べ、明日からの仕入れの活力にしよう。

 ニューヨークでの出来事は追って書くとして、アリゾナ州・ツーソンにやってきている。

SUBWAY2008.02.03 Sunday



 1年ぶりにニューヨークに来ている。ニューヨークの足と言えば、まずはSUBWAY(地下鉄)。縦横、そしてちょっと斜めに、マンハッタンの街を碁盤の目のようにはしるストリートの主要な交差点ごとに地下鉄の駅があり、それらを繋ぐように、1,2,3,4,,,A,B,C,D,,,数字とアルファベット、そしてそれぞれに色付けされた地下鉄の線がある。Lに乗って、8thアベニューで3に乗り換えてアッパー(北)に、、、そんな感じだ。自分のような外国人旅行者にとっては分かりやすく親切である。大昔から始まったヨーロッパ諸国からの移民、そしてメキシコ系、アジア系、アフリカ系と人種のるつぼになっているニューヨークにとってはシンプルに、誰にでもわかる数字や色をうまく使いこなすことは自然なことだろうと想像できる。でもそんな必然なことなのに、自分にとってはカメラを向けたくなる存在になる。それが旅の醍醐味のひとつだろう。そう思いながら、地図を片手に例年より暖かいニューヨークをキョロキョロしながら歩き回っている。

P.S. お店はいつも通り営業中です。

スーツ2008.01.22 Tuesday



 普段スーツを着る機会がほとんどない自分ではあるが、やはり持っていないのは困る。着る機会がないとは言え、そんな機会はふと、しかも突然来るものだ。箪笥の端っこに押しつぶされるようにぶら下がっている肥やし(スーツ)を引っぱり出してみると、どうにか虫には食われていないようである。それを確認して、久しぶりに袖を通すと、体系もそれほど変わっていないようで、もうひと安心。しかし鏡に映った自分はどこか鈍臭い。完全に古臭いのだ。スーツなどはそれほど流行に左右されないはずだが、10年近くも前のものとなれば話は別であり、少々難ありの様子である。幸いにもそれは初秋の頃、上着を必要をしなかったのでその場はパンツとシャツでやり過ごすことに。
 そんな苦い経験を思い出した1月のある日、スーツ探しに原宿界隈のセレクトショップを巡ろうと、意気揚々と出かける。ちょうどセール期間中ということもあり、原宿は黒山の人だかり。そんな中、まずはBeams Fへ。スーツに縁のない自分にとってはなかなか縁のないお店、店内で焦点の定まっていない自分に気がついたのか、お店の方が「こちら辺りがお客様のサイズかと思います。」とサイズごとに並んだ棚の1ヶ所を指し、優しく声を掛けてくれる。ちょうどいい、相談に乗ってもらおうと、あれこれ説明して自分に合いそうなものを選んでもらい、早速袖を通してみる。久しぶりの感触に自分が鏡にどう映っているのかも分からず、とりあえずこんな感じなのだと、確認して、納得する。まだ浮足立っている感じに変わりないので、他のお店も見ようと思うとその親切なお店の方に告げ、お店を後にする。お店を出て、すぐ隣のドアを開ける。
 次はInternational Gallery Beamsへ。階段を上がりメンズフロアーへ。相変わらず音楽のかかっていない静かな店内には人の声だけが響き、独特の雰囲気である。そしてそれが新鮮で心地よかったりもする。店内をゆっくり物色していると、ちょうどそこで勤める友人に遭遇。ラッキー、今日は人に恵まれているようだ。ここでも同じように今までの経緯を話し、お勧めの品を選んでもらう。選んでもらいながら、話を聞いていると、Beams Fはブリティッシュスタイルで、International Gallery Beamsはイタリアンスタイル、そんな違いがあるようなのだとか。イタリアンスタイル? ぱっと思いついたのが、サッカー・イタリア代表選手たち。すらっとした出で立ちで空港の出口から現れる伊達男たちが頭に浮かぶ。良いではないか、望むところである。友人のお勧めの品を試着させてもらうと、自分はお世辞にもイタリア代表には見えないものの、確かにさっき羽織ったBeams Fのものに比べ、スマートでモダンに見える。気に入ったし、縁もあるようだし、イタリア代表目指して、これに決めることにする。そのままシャツ、靴と結局すべてをそこで揃えられ、友人にお礼を言ってその場を後にする。

 そして早速出番である。翌週末に知人の結婚式に呼ばれていたので、お直しから仕上がってきたばかりのスーツに身を包み、彼らの祝福に駆け付ける。彼女のウェディングドレス姿には敵わないが、自分も胸を張って祝福出来たと思う。 なによりも、「おめでとう。」